「収斂進化」とは異なる種の生物が似た特徴を持つように進化すること

「収斂進化」とは異なる種の生物が似た特徴を持つように進化すること 進化論・遺伝子論の基礎

「収斂進化」とは異なる種の生物が似た特徴を持つように進化すること

 
収斂進化(しゅうれんしんか)とは、まったく異なる種の生物なのに、生息する環境に適応した結果、似た形態や特徴を持つように進化すること。収束進化(しゅうそくしんか)とも言う。
 
 

「収斂進化」とは環境に適応した結果違う種でも同じ特徴を持つに至ること

 
全く異なるグループの生物であっても、似たような場所に生息をしていると、その環境に適応していく中で、似たような形態や特長を持つようになってくる。
そのように似たような特徴を持つように進化することを「収斂進化(しゅうれんしんか)」という。
 
言葉だけでは分かりに苦と思うので、一つ例を出す。
 
分かりやすい例として、
 シャチ と サメ
があるかと思う。
 
 

収斂進化の例:「シャチ」と「サメ」

 
収斂進化の例:シャチ
【シャチ】
 
収斂進化の例:ホオジロザメ
【サメ(ホオジロザメ)】
 
「シャチ」も「サメ」も水中で生きていくために適した流線型の形態をしており、ヒレを使って泳ぐと言う特徴を持っている。
 
しかし、「シャチ」は哺乳類で「サメ」は魚類。
同じ脊椎動物ではあるものの、全く違うグループに属する動物だ。
 
ある環境で活動をする中で、その環境に適した形態、特徴を持つように進化していくが、種が異なっていても似たような環境に適応するには似たような形態や特徴を持つように進化していくことがある。
これを「収斂進化」と呼ぶ。
 
 
ダーウィンの進化論的な表現をするならば、
海洋を目指したほ乳類はシャチやクジラの祖先の他にもいたかもしれない。
また、シャチのような流線型以外の形態に進化した種もいたかもしれない。
しかし、魚類と同じ様な流線型の身体を持ち、胸ビレ、尾ビレを持って泳ぐことが海洋で生きていく上では最適解であり、そのような形態にならなかった種は淘汰されてしまった、ということだ。
 
「収斂進化」とはある環境下において生き残るための最適解を求めると、種は違っても似たような結果になる、と言うことなのだろう。
 
 

「シャチ」も「イルカ」も「クジラ」も同じ「クジラ目」の動物

 
ちなみに、「シャチ」も「イルカ」も「クジラ」も同じ「クジラ目」の動物なので、「シャチ」を「イルカ」や「クジラ」と読み替えていただいても何ら問題はない。
 
詳しくは下記も参照されたし。
クジラ、シャチ、イルカは同じクジラ目の生物。大きさによって呼び方が異なる
 
 

「収斂進化」の多様な事例

 

収斂進化の例:「鳥全般」と「コウモリ」「有翅昆虫」

 
「収斂進化」の事例は多種多様だ。
 
収斂進化の例:鳥類(オオワシ)
【鳥類(ワシ)】
 
収斂進化の例:コウモリ
【コウモリ】
 
収斂進化の例:有翅昆虫(トンボ)
【有翅昆虫(トンボ)】
 
例えば、「鳥全般」と「コウモリ」「有翅昆虫」。
「鳥」は「鳥類」で、「コウモリ」は「哺乳類」だ。
「有翅昆虫」は羽がある昆虫のことだが、昆虫は「脊椎動物」ですらない。
だが、生息域を空中に求めた結果、いずれも翼を持つに至った。
 
面白いのは、それぞれの翼の構造や特徴は大きく異なるが、それぞれの体の特徴を活かして、大空で生息できるように進化してきたことだ。
 
 

収斂進化の例:「モモンガ」「ムササビ」「トビトカゲ」

 
収斂進化の例:モモンガ
【モモンガ】
(画像:https://fundo.jp/260182
 
収斂進化の例:トビトカゲ
【トビトカゲ】
(画像:H. Zell投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる)
 
「鳥類」のように空を飛ぶことはできないが、他にも翼を持ち空を滑空できる動物はいる。
哺乳類の「モモンガ(ネズミ目(齧歯目)リス科リス亜科モモンガ族)」や「ムササビ(ネズミ目(齧歯目)リス科リス亜科ムササビ属)」、爬虫類の「トビトカゲ(有鱗目アガマ科トビトカゲ亜科トビトカゲ属)」などである。
これらも、空中に生息域を求めた結果、翼のような仕組みを持つように進化した。
 
 

収斂進化の例:「胎生のシャチ」と「卵胎生のサメ」

 
先ほどの「シャチ」と「サメ」の例だが、子どもの産み方に関しても収斂進化であると考えられる。
 
哺乳類であるシャチは「胎生」という子どもを体内である程度育ててから出産する方法を採っている。
 
対して、魚類の多くは「卵生」という子どもを卵という形で産む方法を採っている。また、卵生の魚類は大量の卵を産むことで生き残る可能性を増やしている種もある。
 
しかし、「サメ」や「エイ」などの軟骨魚類の約 70%ほどが「卵胎生」と言われている。
「胎卵生」とは、卵を産みはするのだが、体外に産み落とすのではなく、体内に卵を宿しそのまま体内で孵化させ、ある程度育ててから出産する方法を採っている。
 
つまり、「サメ」は魚類だが、「胎生」のほ乳類である「シャチ」「クジラ」などと同じように、卵ではなく子どもを産む方法を採っている。
また、「サメ」は卵胎生であるため、哺乳類などと同じように 1回に産む子どもは数匹と少なく、少ない数の子どもを大事に育てる方法を採っている。
 
大海を回遊する種の場合、生存競争において卵生では不利だったのかもしれない。
 
 

収斂進化の例:食虫植物

 
収斂進化は、植物に対しても起こる。
例えば、「食虫植物」である。
 
陸上に生えている被子植物は、窒素やリンなどの無機塩類を主に根を使って土壌から吸収している。
しかし、どのような場所にも無機塩類が豊富にあるわけではないため、昆虫を「食べる」ことでそれらを吸収しようとした植物がある。それらを「食虫植物」という。
 
しかし、「食虫植物」は一つの種、もしくは、近縁種だけというわけではなく、それぞれが環境に適していく中で、多様な種でそれぞれが虫から栄養を吸収するように進化してきたのだ。
 
収斂進化の例としての食虫植物の系統関係
【食虫植物の系統関係】
(参照元:http://www.nibb.ac.jp/evodevo/pdf_JP/2015_Fukushima_Hasebe_saibokogaku_betu.pdf
 
食虫植物は、多様な種があり、現在 12科 19属に存在し 600種を超えるといわれている。
それぞれ、粘着性がある物質で捕らえたり、つるつる滑る容器に落とし込んで捕らえたり、手のひらのように動く葉っぱで閉じ込めたりと、その手法は様々だが、虫を捕らえて栄養源としている。
 
 
収斂進化の例:ブロッキニア、ウツボカズラ、モウセンゴケ
上記の画像は左から
ブロッキニアは「イネ目パイナップル科」
ウツボカズラは「ナデシコ目ウツボカズラ科」
モウセンゴケは「ナデシコ目モウセンゴケ科モウセンゴケ属」
 
収斂進化の例:ハエトリグサ、ムシトリスミレ
上記の画像は左から
ハエトリグサは「ナデシコ目モウセンゴケ科ハエトリグサ属」
ムシトリスミレは「シソ目タヌキモ科」
(画像:Qwert1234 – Qwert1234’s file, CC 表示-継承 3.0, リンクによる)
ムシトリノキ(ロリデュラ ゴルゴニアス)は「ツツジ目ロリドゥラ属」
(画像:https://t000271.shiga-saku.net/e1346856.html
 
収斂進化の例:フクロユキノシタ
フクロユキノシタは「カタバミ目フクロユキノシタ科」
(画像:https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/kodomo/details/post-511.php
 
 

「収斂進化」のまとめ

 
収斂進化(しゅうれんしんか)は、異なる種の生物であっても、生息する環境に適応する中で、似たような形態や特徴を持つように進化することである。
 
「シャチ」はほ乳類だが、海での生活に適応する中で「サメ」と似たように流線型の身体を持ち、胸びれ尾びれで泳ぐような特徴を持つようになった。
 
また、「鳥類」「コウモリ」「有翅昆虫」は大空に活動場所を求めた結果、羽という似た特徴を持つようになった。
 
このように、見た目の特徴に関する収斂進化は分かりやすい。
 
しかし、「シャチ」の「胎生」と「サメ」の「卵胎生」などの機能的な特徴に関する「収斂進化」なども考えると、これまで考えられてきたよりもかなり頻繁に起こっていると考えられるようになってきた。
 
 
また、これまでの進化の系統樹をまとめる作業は、生物の体の特徴を手がかりに行われてきたが、遺伝子の解析技術が普及したことにより、体の特徴がよく似ていても全く違うグループに属していることが分かることや、見た目が全く異なっているのに近縁種であることが分かることなどが増えてきている。
 
生物の進化においては「種」の遠近よりも、環境による影響は大きいようである。
そして、生息する環境の影響で特徴が似てくるということは、自然の中で生き残っていくための最適解はあまり多くないのかもしれない。

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