「島嶼化(とうしょか)」島嶼部で起こる生物の進化の傾向のこと
「島嶼化(とうしょか)」とは
島嶼部(島嶼部)で起こる生物の進化の傾向のこと。
「島嶼化」では小型の動物は大型化し、大型の動物は小型化する
「島嶼」の「島」は大きな島、「嶼」は小さな島を意味する言葉で、「島嶼」という単語で、いくつかの島、島々、と言う意味を持つ。
「島嶼化(とうしょか)」とは、大陸から隔離された島嶼部で発生する生物の進化の傾向のことで、小型の動物は大型化し、大型の動物は小型化(矮小化)するという大陸とは異なる進化の特徴がある。
【島嶼化の典型例である絶滅したゾウの一種(Palaeoloxodon falconeri)の復元骨格】
(画像:https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/10107.html)
具体的には、
小型の動物は大型化する傾向がある。
これは、天敵から補食されることが減るため、小さい体で隠れたり素早く逃げたりする必要が減るためであるとされる。
逆に、大型の動物は小型化(矮小化)する傾向がある。
これは、島ではエサ資源が少ないため、生息できる数には限界があるが、個体数が減ると近親交配によって絶滅するリスクが高まるため、体を小さくして個体数を増やすように圧力がかかる。
また、体が小さい方が代謝量が減り、成熟性が早いなど小さい個体の方が繁殖に有利であり、結果的に小さくなっていくと考えられている。
1964年に生物学者である「J・ブリストル・フォスター」によって提唱された。
島嶼効果、フォスターの法則、島の法則と言われることもある。
「島嶼化」の理由は捕食動物が減り小型、大型である必要がなくなるため
大型の動物が小型化する理由は、エサが少なくなることで栄養失調となり、大きい体を維持することができなくなるためではない。
大型の動物の体が大きい理由は、先にも書いたように島ではエサ資源には限界があるためであるが、大型の動物が大きな体を持つ理由は、捕食動物に食べられないようにするためでもある。
体の大きさやパワーで対抗するためなのだが、捕食動物に捕食される心配が減るのであれば、大きな体を維持する必要が減る。このことも小型化する理由にもなる。
逆に、小型の動物がなぜ小型なのか、と言うと、捕食動物から逃げるためである。
体が小さければ、ちょっとした物陰に隠れたり、物音を立てずに逃げたりすることも可能になるが、捕食動物に捕食される心配が減るのであれば、小さい体を維持する必要が減る。
その結果、大型化するのである。
このように、島嶼部では、大陸にいる近縁種と比べて体の大きさが変わる進化を遂げる特徴がみられる。それを「島嶼化」と呼ぶ。
ホモ・フローレシエンシス(フローレス原人・Homo floresiensis)
【ホモ・フローレンシス(国立科学博物館・復元模型)】
「ホモ・フローレシエンシス(Homo floresiensis)」は、2003年にインドネシアのフローレンス島で発見された「ヒト属」の絶滅種。
発見された化石の全長 1mほどのため、当初は子どもの化石と思われたが、詳細な分析の結果成人のものと確認され、「島嶼化」によって小型化した人類と考えられている。
「フローレンス原人」「フローレンス人」や、サイズから「指輪物語」に出てくる小人にちなんで「ホビット」と呼ばれることもある。
「J・ブリストル・フォスター」と「島嶼化」
【J・ブリストル・フォスター】
(画像:https://ecoreserves.bc.ca/2012/03/17/a-conversation-with-bristol-foster/)
「島嶼化」は、1964年に「J・ブリストル・フォスター」がネイチャー誌の「島嶼における哺乳類の進化」という論文で初めて提唱されたもの。
この論文では、116種の島嶼生物を研究し、本土の種と比較。島の生物の中には、大型化したものもあれば、小型化したものもあると提唱した。
その後、「ロバート・マッカーサー」と「エドワード・O・ウィルソン」による『島嶼生物地理学の理論』の出版によってさらに発展した。
また、1978年には「テッド・J・ケース」がエコロジー誌発表した論文で、フォスターの「島嶼化」の理由の説明は単純化しすぎていて完全に正しいわけではないことを実証した。
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