ファンタジー世界のエルフ、ドワーフ、ゴブリン、リザードマンを生物学で定義してみる

ファンタジー世界のエルフ、ドワーフ、ゴブリン、リザードマンを生物学で定義してみる コラム

エルフ、ドワーフ、ゴブリン、リザードマンを生物学で定義してみる

 
RPGなどのゲームの世界や、剣と魔法が主題のファンタジーのマンガや小説の世界では、我々ヒト(ヒューマン、トールマン)以外にさまざまな直立二足歩行をする種族が登場することがある。
 
例えば、「エルフ」や「ドワーフ」のほか、「ゴブリン」や「リザードマン」などだ。
 
エルフのディードリット、ドワーフのギム、ボコブリン、ゲルミアの蛇人
左から
【エルフ】「ロードス島戦記」の「ディードリット」
(画像:https://news.denfaminicogamer.jp/interview/180514
【ドワーフ】「ロードス島戦記」の「ギム」
(画像:https://news.denfaminicogamer.jp/interview/180514
【ゴブリン(ボコブリン)】「ゼルダの伝説・ブレス オブ ザ ワイルド」
【リザードマン(ゲルミアの蛇人)】「エルデンリング」
 
よくある設定としては、エルフやドワーフはヒューマンとコミュニケーションが取れ、一緒に生活をしていたり、一緒に冒険や旅に出たりしている。
対して、ゴブリンやリザードマンなどは敵対関係であることが多く、戦う相手であることが多い。また、「ヒト」ではないという意味で「亜人」などと呼ばれることもある。
 
 
この設定を現代の生物学ではどのように説明できるのか、それを考えてみた。
 
※この記事はファンタジー世界を題材としているため、「ヒト」をファンタジー世界でよくある表記の「ヒューマン」と呼称している箇所もある。
 
 

エルフやドワーフは「ホミニン」であり、ゴブリンやリザードマンは「ホミニン」ではない

 
エルフやドワーフは、「ホミニン」の 1つの種である。
ゴブリンやリザードマンは、「ホミニン」以外の生物が二足歩行するように収斂進化した種である。
 
こう考えると、ヒューマンとコミュニケーションが取れる種族と敵対的な種の設定をすんなり受け入れることができる。
 
 

「ホミニン」と「収斂進化」について

 
「ホミニン」と「収斂進化」については、下記に記事をまとめているのでそちらを参照してほしい。
「ホミニン」とは霊長目ヒト科ヒト亜科を構成する「ヒト属」の総称
「収斂進化」とは異なる種の生物が似た特徴を持つように進化すること
 
 

「ホミニン」とは「人類・ヒト属」全体を指す言葉

 
ざっくりいうと
「ホミニン」とは、約 700万年前に発生したとされる「サヘラントロプス・チャデンシス」を始祖として広がって進化していく「人類・ヒト属」全体を指す言葉である。
 
一般的に「ヒト」と言うと我々「ホモ・サピエンス・サピエンス」のことを指すが、1990年代以降の化石の発掘、研究によって、20種を超える「ヒト属」に属する種が確認されている。
それら「ヒト属」に属する種を総称して「ホミニン」と言う。
 
 

「収斂進化」とは似た形態や特徴を持つように進化すること

 
「収斂進化」とは、まったく異なる種の生物が、生息する環境によって同じような形態や特徴を持つように進化することを言う。
 
分かりやすい例としては、「シャチ」は哺乳類で、「サメ」は魚類であるが、「シャチ」は大海で生きていくために適した流線型の形になり、ヒレを使って泳げるように進化し、「サメ」とよく似た形態となった。
このように違う種であるにも関わらず、環境によって似たような特徴を持つように進化することを収斂進化と言う。
 
 

「エルフ」や「ドワーフ」は「ヒューマン」と同じ「ホミニン」である

 
「エルフ」や「ドワーフ」は、「ヒューマン」も含めて「ヒト属」の生物種である「ホミニン」である、ということ。
リアル世界で現在生き残っている「ホミニン」は「ホモ・サピエンス・サピエンス」だけだが、ファンタジー世界では「ホミニン」である「ヒューマン(ホモ・サピエンス・サピエンス)」とは違う種として「エルフ」や「ドワーフ」がいるということだ。
 
「ホモ・サピエンス・サピエンス」は、「四大人種」として「ネグロイド(黒色人種群)」、「コーカソイド(白色人種群)」、「モンゴロイド(黄色人種群)」、「オーストラロイド(黒褐色人種群)」に分類することがある。
しかし、「エルフ」と「ドワーフ」と「ヒューマン」の形態は「人種」と言う分類以上に異なることが多いため、「別の種」であると考える方が妥当と思える。
 
 
しかし、同じ「ホミニン」であるため、似たような思考回路があり、コミュニケーションを取れる可能性がある。
言語は異なるかもしれないが、「言語を使ってコミュニケーションをとる」という点は共通していると言えるだろう。
 
 
リアル世界でも、10万~5万年ほど前に我々「ホモ・サピエンス・サピエンス」(もしくは、その直接の祖先)と同時期に、かつ、同じ地域に「ネアンデルタール人」「デニソワ人」など他の「ホミニン」が生息していたことが分かっている。
また、生活圏が重なるエリアでは共存していたと思われる痕跡も残っている。(生存競争の相手であった可能性もあるが。)
 
 

ヒューマンやエルフ、ドワーフは同じ「ホミニン」であるため異種交配が可能

 
「ヒューマン」や「エルフ」「ドワーフ」は「種」として異なるが、同じ「ホミニン」であるため、異種交配ができる可能性もある。
「ハーフエルフ」や「ハーフドワーフ」などと呼ばれるものたちは、異種交配によって生まれたのだろう。
 
ただ、リアル世界でもそうだが、異種交配によって生まれた個体には生殖能力がない可能性がある。
 
 
ハーフエルフのマルシル(ダンジョン飯)とリーフ(ロードス島戦記)
左から
【ハーフエルフ】「ダンジョン飯」の「マルシル」
(画像:https://delicious-in-dungeon.com/
【ハーフエルフ】「ロードス島戦記」の「リーフ」
(画像:「暗黒の島の領主 新ロードス島戦記序章」の表紙より)
 
 

「異種交配」とは異なる種の個体同士が交配すること

 
異種交配とは、異なる種の個体同士が交配することである。
具体的には、「ライオン・メス」と「トラ(タイガー)・オス」の異種交配によって生まれる「ライガー」や、「ロバ」と「ウマ」の異種交配で生まれる「ラバ」などが知られている。
 
異種交配の事例:ライガーとラバ
左から
【ライガー】
(画像:Hkandy投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる)
【ラバ】
(画像:w:User:Dario u / User:Dario urruty投稿者自身による著作物 (w:User:Dario u / User:Dario urruty), パブリック・ドメイン, リンクによる)
 
 
ただ、異種交配は、動物園など特殊な環境で、やや無理やりに交配させないと起こらないともされていた。
そもそも、ライオンとトラは生息域が異なるため出会う機会がないとされていたが、近年は環境破壊などにより生息域が小さくなり、複数の種が狭い範囲に集まる機会が増えた。
それにより、自然界においても異種交配によって誕生したと思われる個体が発見される例が増えてきている。
 
また、2022年に発表された論文では「シルバーラングール」「テングザル」という遠縁にあたる 2種のサルの異種交配によって生まれたと思われるサルの個体が発見された。
さらにその異種交配で産まれたと思われる個体からさらに子どもも産まれたことが確認されており、異種交配によって誕生した個体であるからと言って生殖能力がないとは言い切れないようである。
 https://www.businessinsider.jp/post-254026
 
 

「ホモ・サピエンス・サピエンス」にも異種交配の痕跡がある

 
我々「ホモ・サピエンス・サピエンス」においても、異種交配が行われた痕跡が残っているとされる。
かつて、「ホミニン」である「ネアンデルタール人」や「デニソワ人」は、我々「ホモ・サピエンス・サピエンス」と同時期に、同じような地域に生息していたと言われている。
そして、我々の DNAには、彼らの DNAを一定の割合で受け継いでいることが確認されており、異種交配は珍しいものではなかった可能性もある。
(「ネアンデルタール人」や「デニソワ人」が絶滅した理由は、異種交配によって純血種がいなくなったことが原因ではないか、とする説も存在する。)
 
 
そのため、「ネアンデルタール人」や「デニソワ人」を、ファンタジー世界の「エルフ」や「ドワーフ」とみるならば、異種交配によって生まれるハーフエルフ、ハーフドワーフは、珍しい存在ではないのかも知れない。
 
また、ハーフエルフやクオーターエルフが登場する物語もあるが、先の「サルの異種交配の子どもの子ども」の件を鑑みると、ハールエルフの個体にも生殖能力があり、異種交配によってさまざまな混血の割合の個体が存在するとしても不思議ではない。
 
ただ、異種交配が可能かどうか、さらにその子どもが産まれるかどうかは、「種」と「種」の離れ具合がどれくらいか、によると思われるため、「ハーフエルフ」は子どもを産めるが、「ハーフドワーフ」は子どもは産めない、と言った状況は十分に考えられる。
 
 

グラスランナーやホビットは「島嶼化(とうしょか)」したホミニン

 
グラスランナーのマール(ロードス島戦記)、ホビットのフロド(ロードオブザリング)、ハーフフットのチルチャック(ダンジョン飯)
左から
【グラスランナー】「ロードス島戦記」の「マール」
(画像:http://miporinpepo.mydns.jp/pepo/?date=20180217
【ホビット】「ロード・オブ・ザ・リング」の「フロド」
(画像:https://front-row.jp/_ct/17567940
【ハーフフット】「ダンジョン飯」の「チルチャック」
(画像:https://delicious-in-dungeon.com/
 
ファンタジー物語には、グラスランナーや、ホビットなどと呼称される身長がやや小さい種族も登場する。
これらは「島嶼化(とうしょか)」で説明することが可能かもしれない。
 
「島嶼化」とは、大陸から隔離された島などで起こる生物の進化の傾向で、小型動物は大型化する傾向があり、大型動物は小型化(矮小化)することが知られている。
 
詳しくは下記の記事をまとめているのでそちらを参照してほしい。
「島嶼化(とうしょか)」とは島嶼部で起こる生物の進化の傾向のこと
 
 
ホモ・フローレンシス(国立科学博物館・復元模型)
【ホモ・フローレンシス(国立科学博物館・復元模型)】
 
実際に、インドネシアのフローレンス島では「ホモ・フローレシエンシス(フローレス原人)」と呼ばれる「ホミニン」の化石が出土しているが、身長は 100cmほどしかない。
発見された当初は子どもの化石と思われていたが、詳細に分析した結果、成人のものであることが判明し、島嶼化によって小型化した「ホミニン」ではないか、と考えらえるようになった。
 
つまり、グラスランナーなどの、ヒューマンと比べると小さめの体格の種族は、島嶼化によって小さく進化を遂げた「ホミニン」の一つの種と考えると納得がいくのではなかろうか。
島嶼化の影響だとすると、おそらく、彼らの絶対数は少ないだろう。
 
 

「ゴブリン」や「リザードマン」は「ホミニン」ではない

 
では、ゴブリンやリザードマンはどうか。
ゴブリンやリザードマンなどは、多くの物語で、直立二足歩行をし、武器などの道具を作り、火を使ったり、集団で社会生活を送ったりと、「ホミニン」と同じようにある一定の水準の知能を持ち、社会生活をしているように描かれることが多い。
 
しかし、よくある設定としては、ゴブリンはブタから進化し、リザードマンはトカゲから進化した生物とされる。
 
つまり、ブタやトカゲが何らかの自然環境の影響を受け、直立二足歩行をする能力を身に付け、一定の知能を持つ生物に進化するに至っている、と言うことだろう。
 
 
「ゼルダの伝説・ブレス オブ ザ ワイルド」のゴブリン(ボコブリン)と「エルデンリング」のリザードマン(ゲルミアの蛇人)
左から
【ゴブリン(ボコブリン)】「ゼルダの伝説・ブレス オブ ザ ワイルド」
【リザードマン(ゲルミアの蛇人)】「エルデンリング」
 
 

ゴブリンやリザードマンの思考回路はヒューマンとは全く異なる

 
しかし、「ゴブリン」や「リザードマン」は「エルフ」や「ドワーフ」とは異なり「ホミニン」ではない。
直立二足歩行をし、一定の知能を持つ生物であっても、元は「ブタ」や「トカゲ」から進化した生物であるので、思考回路がまるで違うと考えるべきである。
コミュニケーションが取れて、お互いが理解しあえる、なんてことがあるはずがない。
 
例えば、外国人とは言葉が違うためにコミュニケーションが取れない、と言っても同じヒトであるため、身振り手振りでもコミュニケーションが可能な場合もある。(コミュニケーションを取ろうとする共通認識があるからだ。)
 
しかし、ブタやトカゲの場合、例え彼らの言葉の意味が分かるようになったとしても、根本的な思考パターンがまるで違うため、意思疎通ができるとは思えない。
 
何かしらの相応に発達したコミュニケーション手段を持たないと社会性を持つ知的生物にはならないと思うが、声によるコミュニケーションを取っているとしても、発生する声を人が認識できる周波数かどうかも分からない。
そもそもコミュニケーションの手段が「言語」であるのかどうかも分からない。
 
 

ゴブリンやリザードマンとは相いれない存在のため戦闘に発展する

 
そのように、「ブタ」や「トカゲ」から進化した「ゴブリン」や「リザードマン」とは相容れない存在となる。
そのため、お互いの生息域に踏み込んでしまうと必然的に戦うことにならざるを得ないだろう。
 
リアル世界においても、野生のクマに出くわしたとき、「落ち着け、危害を加えないから!」と叫んでみても無駄なように。
 
いや、リアル世界であっても、武器を持った見知らぬ人たちが自分が管理する敷地の中に入ってきたら排除しようとするだろう。
ましてや、まったく異種の生物が、言葉も通じない生物が武器を持ってやってきたら、戦闘になることは避けられないだろう。
 
 

ゴブリンやリザードマンとの異種交配は不可能

 
ゴブリンやリザードマンがブタやトカゲから進化したのであるとするならば、「ヒューマン」とはあまりにも種が違い過ぎているため、異種交配は不可能であろう。
 
「ハーフゴブリン」や「ハーフリザードマン」の誕生はありえないであろう。
そもそも生殖器の形状や交尾の仕方も異なると思われ、果たして行為そのものが可能なのだろうか、とも思える。
 
ただ、まぁ、リアルの自然の中では、サルがヒツジやシカなどを相手に交尾の真似をすることが観察されているため、生殖ではない、何か違う目的のために行為をすることはあるのかもしれない。
 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/121900137/
 
 

別種族でも共生や寄生などにより集団を形成することはある

 
また、ゴブリンやリザードマンには、上位種があり、それらによって一定の集団を構成する場面や、違う種の生物が徒党を組んでいる場面なども描かれる物語がある。
それらはリアル世界でも、共生関係や寄生などによって別種の生物が一緒にいる場合もあるため、取り立てて不思議な状況ではないだろう。
 
ただ、一つの集団を見て、ヒトは家族や仲間のような親しい関係と見るかも知れないが、上位種は周りにいる生物を単なるエサ(家畜)としか見ていないかもしれない。
 
「ゼルダの伝説・ブレス オブ ザ ワイルド」のゴブリン(ボコブリン)、モリブリン、リザルフォス(リザードマン)の集団
【ゴブリン(ボコブリン)、モリブリン、リザルフォス(リザードマン)の集団】
「ゼルダの伝説・ブレス オブ ザ ワイルド」
 
上記の画像は「ゼルダの伝説・ブレス オブ ザ ワイルド」の画像だが、モリブリンは武器がないとき、ボコブリンを武器代わりに投げたりもする。
 
 

直立二足歩行の種・一定の知能を持つ種が複数存在するのか

 
今回考察したようなファンタジーの世界には「ヒューマン」以外に「エルフ」「ドワーフ」や「ゴブリン」「リザードマン」など様々な直立二足歩行の生物が登場する。
 
それが、リアル世界と異なることがあるとすれば、なぜそこまでに直立二足歩行をする生物が多いのか、ということである。
 
リアル世界とは異なる、ホミニン以外にも直立二足歩行と一定の知能を持つことを促す強烈な何かがあるのだろうと思われる。
それが「何か?」については、各作品ごとに一定の示唆があるのかもしれないが、それが明確になるのであれば、なぜリアル世界には「ホミニン」だけなのか、の理解が進むのかもしれない。
 
 
牛頭人身の怪物のミノタウロスと「ハリー・ポッターと賢者の石」のトロール
左から
【ミノタウロス】(牛頭人身の怪物)
(画像:https://xesray.com/products/wave-4-bulls-014-kasos
【トロール】「ハリー・ポッターと賢者の石」
(画像:https://warnerbros.co.jp/franchise/wizardingworld/special/creatures/mountain-trolls.html
 
 
ファンタジー世界では、ゴブリンやリザードマン以外にも、ミノタウロスやトロールなど多くの種が二足歩行をし、武器などを持ち、仲間などとコミュニケーションを取りながら集団生活を送ると言った一定の知性を持つ言動をする。
 
現在のリアル世界での直立二足歩行の生物は「ホモ・サピエンス・サピエンス」だけだと言う点を考えると、ファンタジー世界では、直立二足歩行をする方向に進化を促す強烈な何かあるのではないか。
そうでないと、これほどまでに「直立二足歩行」という仕組みへの収斂進化は生まれないであろう。
 
 

知能を持つ複数の生物が共存することは可能なのか

 
ちなみに、ある一定の知能を持つ生物が複数共存することが可能なのか、という疑問もある。
 
最近の研究には、ホモサピエンスサピエンスが、他のホミニンを絶滅させたのではないか、と述べるものもある。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0a93ef980ea344cc8557355c691bee11c7945915
 
つまり、「ホモ・サピエンス・サピエンス」が優秀であったため、彼らは自ら作った道具などを使って、同時期に存在していた他のホミニンたちを駆逐してしまった、との説だ。
 
ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた
上記のように「ホモ・サピエンス・サピエンス」は「イヌ」を家畜化することで他の「ホミニン」を駆逐した、との説もある。
 
現代では「ホモ・サピエンス・サピエンス」は様々な生物を絶滅に追いやっているので、似た環境で似たような生活スタイルで生息域も近かったであろう「ネアンデルタール人」や「デニソワ人」を絶滅させたとする説は納得がいく。
 
 
つまりは、ある一定の知能を持つ種が複数存在しているという状態は、ある一時期においては可能かもしれないが、長い間それが続くということは難しいのかも知れない。
 
「葬送のフリーレン」に出てくる交易都市ヴァルム
【葬送のフリーレン】の交易都市ヴァルム
(画像:https://frieren-anime.jp/story/ep03/
 
少なくとも、5万年ほど前のホモ・サピエンス・サピエンスが狩猟生活を送っていた時代程度の文化水準ならいざ知らず、ファンタジー物語で描かれる世界は、中世程度の工業力を持つの文明を築いていることが多い。
そのような水準の文明がある環境では、すでにほかの知的生物は駆逐してしまっている可能性の方が高いのではないか。
 
中世程度の工業力を持つには、相当数の個体数が必要であるし、そのためには相当の地域にヒューマンが進出している必要がある。
そのような状況であるならば、他の知的生物の生息域にも進出しており、文化・科学技術の発展の差によって、他の知的生物は排除されてしまっているのではないか、と思えるのである。
 
貪欲なヒューマンは、未開の地があればどんどん進出していくと思える。
例え大海で隔てられていたとしても、その大海を越えていく船を発明するだろうし、航海技術を持つに至った場合は、大海は何の隔たりとはならず、他の陸地にも進出して行くだろう。
そして、他の種を駆逐してしまうだろう。
 
 
実際に、大航海時代には船で世界中に進出し、世界各地で様々な文化や文明を駆逐している。
また、現在もヒトは各地で戦争をし続けているし、多くの動物を絶滅させ続けている。
ホモ・サピエンス・サピエンスだけでもこれだけの他種への影響力があるだから、複数の知性を持つ生物が並び立つことが可能なのだろうか、と疑問に思う。
 
 

知能を持つ複数の生物が共存することが可能だとすれば

 
もし、複数の知的生物が共存する可能性があるとすれば、地球よりもずっと広い陸地があり、それぞれ個別に知的生物に進化していき、それぞれの生物が一定の水準の文化を持つに至った以降に出会う時であろうか。
 
例えば、現代のように、力でなはく法による統治と言う概念があり、個々人がある一定の生存権を保つことができるような社会生活を送れるくらいの文化水準になった知的生物同士が、それぞれの種の力関係がほぼ拮抗しているような状況で出会うのであれば、可能かもしれない。
 
「インデペンデンスデイ」のオープニングで地球を侵略する巨大な宇宙船
【インデペンデンスデイ】
(画像:https://eiga.com/movie/42521/
 
地球上ではすでに「ホモ・サピエンス・サピエンス」が知的生命体の優先的な地位を占めているが、同じような文化水準の他の星の生命体と出会うことができれば、共存は可能なのかもしれない。
 
しかし、その出会う他の星には地球にはない魅力的な鉱物があり、その生物はヒトには対抗する手段がない程度に弱い存在だと分かると、ヒトは彼らを駆逐してしまうだろう。
 
 
ファンタジー世界の物語が、こういった知的生物同士が出会って、ちょうどせめぎあっている短期間の物語であるとするならば理解もできるのかもしれない。
出会うきっかけは、人間界と魔物が住む魔界は全く別の世界であったが、ある日その魔界の門が開いて魔物が...みたいな。

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